« 学研、出版とネットのクロスメディア事業を開始。22の連動サイトを開設 | メイン | 年末年始 »
2006年12月18日
新刊点数は多い方がよい?!
いつも毎週週末に業務日誌のエントリーを書いているのですが、今回は師走のせいか時間がなく、週末に自宅で書いたものを今アップすることになってしまいました。
さて、1年に発行される新刊点数は出版科学研究所によるとこの10年で1万3千点増え2005年は76,528点になったそうです。
点数が増えたことで現場が大変という声をよく聞きますが、たまたま読んだ「エンタテインメント事業のマーケティング」(ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー2007年1月号掲載)という論文に、新刊点数を増やすのはいいことだという主張がなされており、目を引きました。
もともとこの論文は出版業界に限らず、音楽や映画も意識した書き方になっており、例えば、原文の表現では、「新刊点数を増やす」でなく「賭けの数を増や」す、となっていたりします。そこで、その主張を出版業界事情に即してご紹介していきたと思います。
さて、早速ですがこの論文ではヒット作の予測はそもそも不可能である、ということで、5つの対策を提案しています。
1.新刊点数を増やし、刷り部数を小さくする
これまで出版業界で言われていた、新刊点数が多すぎるので、少数精鋭にして部数を増やせ、というテーゼとは真っ向から対立しています。しかし、この論文では、今はそもそも何があたるか分からない時代だとしており、そうだとすれば数打ちゃ当たる、という考え方は確かに指摘のとおりだと思います。
2.読者の反応を調べる
ブログやネットコミュニティなどを活用して、個人や潜在読者となりそうなコミュニティの反応をリアルタイムで追跡・把握するとよいとのことです。
ハガキの感想を待っているなどという施策ですとなかなかリアルタイムにはできませんので、ネット時代ならではの施策と思います。
3.予算を柔軟に配分する
当初の計画にとらわれることなく、読者の反応に対応して柔軟に組み替える必要があります。「その際、過去のデータや直感にこだわってはいけない」とのことで、「好意的に反応した消費者に的を絞り、発売後のマーケティング活動や予算をそこに集中させるのが肝心」とのことです。
4.自然発生する社会的影響を活用する
本の支持者が現れたら、「この人が注目されるよう仕向け、社会的影響を増幅させてい」きます。ある実験から、エンタテインメント作品の成否は質というより、社会的にどのような評価をされているのかが鍵となっていることが示された、とのことで、本を買う際に高評価であることが参照されるようにしていくことがヒット作への道となります。
5.流通や契約条件に融通性を持たせる
初版の印税率を下げたり、在庫リスクに応じた掛とすることで、今より低リスクで本の制作・流通ができるようになると思われます。
新刊数が多いことは必ずしも間違っていない、という指摘は言われてみればもっともと思います。実際、少なく刷って、売れるというPOSデータが得られた時に一気に増刷をかけ、取次・書店と連携して売り伸ばすことは、私が書店にいた頃から比べればかなりうまくなってきているのではないかと思います。
ただし、ネットの口コミ情報を追いかけることが不十分に思われ、リアルタイムの読者の感想をうまく仕掛けに活かせていないように思われるのと、新聞等に偏った硬直的な宣伝予算の配分がされているように思われます。特にスタートアップ時には以前ご紹介したPPC広告(検索エンジン広告)は低予算で出広できるのでおすすめです。
また、4.については、この論文には施策を具体的にどうやればいいのかについての示唆があまりなく少し残念でした。このような口コミ系のマーケティング施策は炎上などの逆効果を生むことも多いのでおいそれと取り組めないのではないでしょうか。
さかのぼって、出版社は新刊点数が多いことを前提とした制作・流通の体制作りをしていかなくてはいけないことを痛感しました。その一つとして、自社サイトの充実は、読者のフィードバックを自然に集めていく上でも必須と思います。(寺島)
投稿者 d3admin : 2006年12月18日 16:56 : カテゴリ プロデューサーの業務日誌
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://blog.dcube.co.jp/cgi-bin/mt-tb.cgi/1715



